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人にも感染する致死率100％
人間に感染すると致死率100％
毎年世界中で約5万人の死者を出している狂犬病ウイルスは、一度発症すると99.99%以上の確率で死亡するという大変恐ろしいウイルス疾患と知られています。
生存例もきわめてまれにあるが、後遺症などが発症し、極めて危険なウイルスである。
狂犬病による死者の95%以上はアフリカとアジアで発生しており、中国・タイ・フィリピン・マレーシアなどは現在でも渡航する際は動物などには不用意に接触してはいけません。
2017年WHOの発表によれば年間の死亡者数推計 59,000人（うち、アジア地域35,000人、アフリカ地域21,000人）と言われております。
また、狂犬病感染動物に噛まれた後に発症を防ぐ目的でワクチンを接種することを暴露後ワクチンとよばれ、2017年では暴露後ワクチン接種者数推計 1,500万人ともいわれています。
感染する動物と感染させる動物
全ての哺乳類で感染することがわかっており、牛豚羊などの家畜から、犬猫などの小動物、またコウモリなどの鳥類、さらにイルカなどの海棲哺乳類、野生動物にいたるまで狂犬病ウイルスの感染の可能性はあります。
厚生労働省のホームページでは各国の狂犬病を媒介（感染させる）リスクがる動物のハザードマップが発表されています。
狂犬病がいない国（清浄国）は？
日本・オーストラリア・アイスランド・ニュージーランド・ハワイ・グアム・フィジー諸島
日本の厚生労働省が発表している狂犬病清浄国は日本・オーストラリア・アイスランド・ニュージーランド・ハワイ・グアム・フィジー諸島のみとされています。台湾やイギリス、ノルウェーなども長らく清浄国でしたが、2012年から2013年にかけて野生動物で狂犬病の発生が認められました。この発生を受け、農林水産省はこれらの国をを非清浄国として扱うこととなりました。
狂犬病ウイルス
狂犬病ウイルスはラッサウイルス科のラブドウイルスに分類され、ウイルスの形状が砲弾『銃の玉』状の形をしているのが特徴的です。
全ての哺乳類に感染し、脳などの神経に損傷を与え、致死率100％の高病原性の危険なウイルスです。
感染した動物はウイルス性脳炎などの脳障害をきたし、痙攣・異常な興奮・凶暴性・を起こし、精神錯乱状態になる。その後、昏睡状態に陥り、やがて呼吸不全で死にいたります。また、独特な症状として水に対して異常な恐怖心を抱く症状「狂水症」や、または風や音などに対して恐怖心を抱く「狂風症」などがみられ、これは、感覚をつかさどる神経細胞が障害されて生じます。
狂犬病ウイルスは唾液によって感染します。感染動物はウイルスによって、凶暴性・錯乱状態凶暴性を生じさせ、他の動物への噛むなどの攻撃を行う衝動を起こします。これによりウイルスの感染が成立します。
ウイルス感染サイクル
狂犬病ウイルス自身が生き残るために、脳炎による凶暴性を生じさせ、咬んだりすることによって狂犬病ウイルス自身が生き残るための生存手段と考えられています。
致死率がとても高いので、ウイルス自体は宿主（感染した動物）を殺してしまい、ウイルス自身が存在することができなくなります。ウイルスは生き残るための手段として、感染した動物を錯乱させ、凶暴化させる事で、唾液での感染様式を確立させました。
日本の狂犬病の歴史
日本国内では古くから、狂犬病ウイルスに感染し、錯乱状態の症状を「狐つき」など、動物が憑依したという言い伝えがあるほど、日本国内では狂犬病ウイルスが散発し、多くの命が失われてきました。当時は野犬狩りという言葉がはやり、地域で野放しになっていた犬を捕獲し殺処分の対象になっていました。
このような状況下で、1950年に狂犬病予防法が制定・施行され、犬の登録、予防注射、野犬等の抑留が徹底されました。そして、わずか7年という短期間のうちに狂犬病を撲滅するに至りました。
犬の狂犬病については狂犬病予防法が法律化（狂犬病予防法2条参照）
家畜などの牛や馬などの狂犬病については、家畜伝染病として家畜伝染病予防法の法律化（家畜伝染病予防法2条及び家畜伝染病予防法）
日本国内では1956年に日本人と犬の感染症例が最後の報告になり、1957年の猫での症例を最後に日本国内での犬猫そして日本人の狂犬病は撲滅されました。この事例を見ても、犬の登録や予防注射が狂犬病予防にいかに重要な役割を果たすかが理解できます。
狂犬病撲滅への努力と歴史
狂犬病を日本から撲滅するために、多くの犬たちが当時の警察にさっ処分されました。特に処分数が多かった神奈川県では、供養塔や慰霊塔が建立されたり、あちこちで慰霊祭が開かれ多摩動物公園には動物慰霊塔があります。
国内初の狂犬病ワクチンを接種した「栗本東明」とサムスの役割
栗本東明は1895年、パスツールの開発した方法で、ウサギの脳を使って狂犬病ワクチンを完成させます。狂犬病の発症前にワクチンを接種する「曝露後免疫」と呼ばれる治療を行い、発症前の62名に実施したところ、60名が命を救われました。
また、クロフォード・F・サムス（米国陸軍軍医准将兼、GHQ公衆衛生福祉局長）は、日本国内の犬の展示会や犬の移動の中止を呼びかけ、さらに狂犬病予防接種を推奨した影の立役者です。この２人によって1950年の狂犬病予防法の成立が決まり、その後、６頭の狂犬病を最後に日本は清浄国となりました。
犬の「狂犬病ワクチン」の必要性
狂犬病の流行の仕方は、人口密集地域に発生する都市型と呼ばれるものと、野生動物によって感染が成立する森林型に分類されます。
2022年において、日本国内では犬などを含めて狂犬病の発生はありません。しかし狂犬病は、日本の周辺国を含む世界のほとんどの地域で依然として発生しており、日本は常に侵入の脅威にさらされていることから、万一の侵入に備えた対策が重要となっています。また、国内ではかつて見られた狂犬病は都市型であり､現在の狂犬病対策も犬の流行阻止を目的として狂犬病予防法が制定されています。しかし、ヨーロッパでは狂犬病媒介動物がキツネなどの野生動物であり、この報告から推察されると、北海道などの野生キツネにおいては何頭のキツネが生息しているかは不明で、狂犬病のウイルス調査もされていません。今後､北海道の野生動物､特にキツネに狂犬病が広がる可能性を判断し､その危険性を評価するために､全道的な生息数調査を行う必要があると「北海道立衛生研究所」では警倫を鳴らしております。
万一狂犬病が国内で発生した場合には、素早くしっかりと発生の拡大とまん延の防止を図ることが非常に重要となります。そのためには、犬の飼い主一人一人が狂犬病に関して正しい知識を持ち、飼い犬の登録と予防注射を確実に行うことが必要であり、狂犬病の発生を予防する手立てになります。
狂犬病予防法
施行年
狂犬病のまん延防止と撲滅を目的に1950年8月26日に施行されました。（昭和二十五年法律第二百四十七号）
対象動物（第一章第二条）
感染の恐れのあるすべての動物が対象となります。
犬の所有者は毎年１回（4月〜6月）、狂犬病の予防注射を受けさせることが義務付けられています。接種した動物病院で「注射済証」を受け取り、この注射済証を市長村長に提示して「注射済票」の交付を受けます。飼い主さんはこの注射済票を犬に付けておくことが義務付けられています。
また、狂犬病予防の観点から、狂犬病予防法の中で、犬に戸籍（犬の登録）義務があります。（第二章 通常措置（登録）第四条）
犬の戸籍（登録義務）
犬の所有者は所在地の市町村長に犬の登録を申請することが義務付けられています。登録されると鑑札が交付されますが、飼い主さんは犬にこの鑑札を付けておくことが義務づけられており、犬の死亡、所有者や犬の所在地変更、所有者の氏名変更があった場合にはその旨を届け出る必要があります。
※ 生後 91 日以上の犬を飼う方は、飼い始めてから 30日以内の登録手続きが必要です。
犬の狂犬病ワクチンはいつ接種するの？
接種時期
毎年１回（4月〜6月）、狂犬病の予防注射を受けさせることが義務付けられていますので、集合注射会場やかかりつけの動物病院での接種を受けましょう。
鑑札の義務（第二章 通常措置「予防注射」第五条）
狂犬病ワクチンの接種を行ったら動物病院で「注射済証」を受け取り、この注射済証を各自自体の役所に提示して新しい「鑑札」の交付を受けます。この時、交付された鑑札は狂犬病ワクチンを接種した犬の証明書になりますので、必ず首輪につけておくことが法律で義務化されております。
また、この業務を動物病院が飼い主さんに代行して行っている動物病院もありますので、動物病院で狂犬病接種を受けたら、その場で鑑札をもらい、犬の首輪につけてください。
狂犬病ワクチはどこで接種するの？
狂犬病ワクチン接種の場所は大きく分けて２箇所です。
年一回行われる集合注射
獣医師会が行っている集団接種です。
持ち物は「狂犬病接種のハガキ」と「接種料金」を持参して会場にいきます。
登録手続きと鑑札を接種後にその場でもらうことができます。
年一回なので、時間の都合が合わない場合はかかりつけの動物病院に行くことになります。
かかりつけの動物病院
かかりつけの動物病院でも、もちろん接種可能です。
持ち物は「狂犬病接種のハガキ」と「接種料金」を持参してください。
病院によっては集合注射同様に「登録手続きと鑑札」を接種後にもらうことができます。
＊対応していない病院の場合は、動物病院で、狂犬病接種ずみ証明書を交付してもらい、市役所に飼い主さん自身が届けにいく必要があります。
狂犬病ワクチンをしないと法律違反
飼い主さんが予防接種を怠ったり、必要な登録・届出をしなかったり、鑑札を付けない場合は20万円以下の罰金が科せられます。
（第五章 「罰則」第二十六）
もし、国内で狂犬病が発生したら？
狂犬病予防法において、国内で狂犬病に感染したと思われる犬が見つかった場合について明記されています。
- 公務員（予防員）による犬の感染している犬の隔離。
- その予防員によってけい留が困難な場合は殺すことも法律上で可能になる
- さらに区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じられる。
- 必要であれば区域を定めて犬の一斉検診を実地し、さらに臨時の予防注射を行う。
- 狂犬病の周辺の７２時間以内の交通をしや断し、又は制限が可能。
まとめ
狂犬病は古くからある致死率１００％の伝染病で、現代の日本では狂犬病予防法の施行により撲滅されておりますが、諸外国はいまだに狂犬病ウイルスが存在しています。国内の防疫のために、狂犬病予防法に基づき狂犬病ワクチンを接種しましょう。
狂犬病ワクチン接種の３つの義務
- 犬の登録（戸籍）義務
- 毎年4月〜６月に狂犬病予防接種を受けさせる義務
- 接種したら鑑札をつける義務
「世界狂犬病デー」
2007年に世界保健機関（ＷＨＯ）・国際獣疫事務局（ＯＩＥ）・ＥＵの合同会議で世界中の狂犬病の撲滅を、地球規模で呼びかけることを目的に作られ他のが「世界狂犬病デー（World Rabies Day）」です。
9月28日が「世界狂犬病デー」となりました。
2009年には世界105ヶ国が参加し、130万頭の犬に狂犬病ワクチンが接種されました。
パンデミック映画
狂犬病ウイルスの安全神話に囚われてやがては世界が破滅するショッキングな映画として有名なのはウイルスミスの「アイアムレジェンド」です。
