皆さんが大好きなチョコレートは、犬にとっては恐ろしい中毒を起こす食材の一つです。チョコレートは甘い匂いがするために、犬も大好物です。またチョコレートは、アイスクリームやケーキ、パンなどに含まれている一般的な身近な食材として使用され、さらに、低GI食として私たち人間にとっては健康食品として注目を浴び、チョコレートが身近になってきたために、犬のチョコレート中毒が多発しております。
「172人の獣医師のうち141人がチョコレート中毒を診療した経験があり、うち9件は死亡に至った」という報告もあります。
https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2011/news_0120207.html
今回の記事では、身近なチョコレートが愛犬にとって及ぼす危険性な食材で、愛犬が食べてしまった時の症状や対処についてまとめました。
目次
チョコレートの中毒成分は?
チョコレートの中毒成分は「テオブロミン」です。
チョコレートはカカオ豆から作られています。このカカオ豆にはテオブロミンという苦味の成分が含まれており、これが犬にとっては中毒成分になります。
このテオブロミンは、主に脳などの中枢神経や心臓に大きなダメージを与えます。
テオブロミンはキサンチン誘導体と呼ばれる一種で、薬剤ではカフェイン・テオフィリンなど、医薬品で使用されている成分の一つです。
チョコレートの中毒量
犬におけるチョコレート中毒量はテオブロミンの含有量によって左右されます。つまり、チョコレートに含有されているカカオ成分が高いほど、危険であることがわかっています。
テオブロミン中毒量
テオブロミン摂取量によって症状が重症化
- 20mg /kg以上で軽い下痢や嘔吐
- 40〜50mg /kg以上 中程度から重度の症状(頻脈・震え・興奮)
- 60mg /kg以上 重度の症状(不整脈・けいれん発作・昏睡)
- 250〜500mg /kg 死亡率が50%以上
Household Food Items Toxic to Dogs and Cats. Frontiers in veterinary science. 2016;3;26. doi: 10.3389/fvets.2016.00026.
市販されているチョコレートの中毒量
ミルクチョコレートには、それぞれ1gあたり2mgのテオブロミンが含まれていることが多く、ホワイトチョコレートはテオブロミンの量は少量であると考えられています。しかし、現在健康志向の高カカオ(99%)チョコレートと呼ばれているチョコレートでは100g中に1100mgのテオブロミンが含有されていることがわかっています。(独立行政法人個民生活センター https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0114-10j.pdf)
製品名 | メーカー | カカオの割合 | テオブロミン (mg /100g) | カフェイン (mg /100g) |
チョコレート効果99% | 明治 | 99% | 1100 | 120 |
チョコレート効果86% | 明治 | 86% | 990 | 93 |
カレ・ド・ショコラ | 森永 | 70% | 610 | 110 |
カカオの恵み (ドミニカブレンド) | ロッテ | 88% | 800 | 84 |
カカオの恵み (メキシコブレンド) | ロッテ | 77% | 710 | 68 |
リンツチョコレート99% | フランス | 99% | 1100 | 98 |
リンツチョコレート85% | フランス | 85% | 840 | 84 |
明治ミルクチョコレート | 明治 | 36% | 250 | 25 |
森永ミルクチョコレート | 森永 | 41% | 270 | 36 |
ロッテガーナミルク | ロッテ | 33% | 220 | 28 |
ココアパウダー | 森永など | 1.4mg以上 |
高カカオチョコレートは、普通のチョコレートと比べて、テオブロミンは、2.3〜4.5倍。カフェインは2.3〜4倍含まれている。ちなみにコーヒーには60mg/100gのカフェインが含まれている。
*ココアパウダーには、通常1gあたり14mg以上のテオブロミンが含まれています。
体重5kgの愛犬が食べたら危険な量は?
テオブロミンの危険中毒量を100mg /kgとすると、体重5kgの場合はテオブロミンを500mg摂取すると危険な量です。チョコレート効果99%を50g食べると重篤な症状を起こします。さらに、100g食べてしまうと致死量に当たり、死んでしまう可能性があります。またチョコレートの中にはテオブロミンだけではなく、カフェインが配合されており、カフェインもテオブロミント同様に中毒作用を有しており、チョコレートは大変危険な食材です。
チョコレート商品によって含有されているカカオの量により、テオブロミンの量も変わってくるので、誤食させてしまった場合は、その商品のカカオ成分の量が重要になってくるので、どんなチョコレート製品を食べさせてしまったのかを動物病院に伝える事が重要であることがわかります。
板チョコの量は?
一般的に板チョコの量は50gとされていますので、体重5kgの犬が板チョコを一枚食べると重篤な症状が起きます。
犬の中毒症状について?
中毒を引き起こす量のチョコレートを摂取してしまうと2〜4時間後には症状があらわれます。主な中毒症状は下痢、嘔吐などの消化器症状ですが、テオブロミンの濃度が高いと心臓や脳に損傷を与え、不整脈、けいれん、昏睡、興奮など多岐にわたる症状を生じます。
より高容量のチョコレートを摂取すると脳障害による呼吸不全を起こし死につながる危険性も出てきます。
バレンタインデーとチョコレート中毒
動物保険会社「アニコム」の調査によるとチョコレート中毒の報告件数が多発しているのは、「2月と12月」です。皆さんご存知の通り、2月はバレンタインデーの月であり、12月はクリスマスです。この「2月・12月」はチョコレートの扱いを注意を怠らないことです。
愛犬がチョコレートを食べてしまったら・・・
自宅での応急処置はありません!
「いつ、どの製品のチュコレート食べたか?」を冷静に調べて動物病院に連絡してください。
病院での対処法
摂取食後2〜6時間以内ならば吸収阻害のために特殊な薬剤を使用して吐かせることは可能です。しかし、うまく吐かせられない場合もありますので、点滴などの処置が必要になってきます、また重症の中毒によって指揮障害が生じている場合は、吐かせることはできないので胃洗浄と活性炭の投与を行います。
*活性炭は非常に有効で、腸内のテオブロミンと吸着して、体内に入らないように阻害してくれる作用があります。
まとめ
チョコレート中毒は愛犬に大きな被害を及ぼします。またチョコレートに含まれているカフェインも問題になってきます、さらに、チョコレート中に含有されている多量の脂肪成分により急性膵炎を引き起こす可能性もあります。急性膵炎は摂取後72時間以内に起こる可能性がありますので、愛犬の状態には注意が必要です。